「とにかく俺が言いたいのはね、俺の中では夏美ちゃんはわりと特別な部類に入ってんの」

「………」

「だから、そういう意味で俺夏美ちゃんのこと好きなの」



“カノジョのみっちゃん”とは別の部類なのに。



「修ちゃんにはあげない」


雪ちゃんはあたしを引き寄せた。



初めて雪ちゃんがあたしに少しだけ見せた独占欲と嫉妬心が、愛しさを生む。


卑怯な男。

馬鹿なあたしはまたグラつくじゃない。



「夏美」


あんたは“カノジョのみっちゃん”と別れる気なんてないくせに。

もし別れたって、あたしとどうこうなる気はないくせに。


なのに、気付かぬうちに、雪ちゃんに心までかっさらわれてしまいそうで。



「ねぇ、やめてよ。あたしあんたにマジになりたくないから」


それは口先だけの抵抗だった。

雪ちゃんはふっと笑い、



「夏美ちゃんとなら、堕ちるとこまで堕ちちゃってもおもしろいかもね」


冷たい指先があたしの服の隙間に滑る。


結局、ヤルことはヤルのね。

それが雪ちゃんなりの愛情表現であると信じたいものだ。



狭い車内で雪ちゃんと密着した場所が熱を生む。



夏の匂いのする雪ちゃんに抱かれながら、あたしは、捨てようとしているはずの感情に蝕まれる。

あたしこのままじゃ、雪ちゃんのこと本気で好きになっちゃいそうで怖い。