また夜を迎えた頃、雪ちゃんはあたしをかっさらいに来た。
あたしはオールで死ぬほど眠いっていうのに、あれからずっと寝てたらしい雪ちゃんは、元気百倍。
あんぱんまんよりタフな男。
「ねぇ、わかってる? あたし眠いの。すごーく眠いの」
「うん。顔が死人だもんねぇ」
目の下にクマを作ってるあたしを、指差してケラケラ笑う雪ちゃんが憎い。
「ほんとは今日ね、西女の子と約束してたんだけどさぁ。何かめんどかったからブッチしたの。夏美ちゃんと会いたくなったから」
「何それ?」
「っていうか、西女の子、修ちゃんに喰われちゃったし? 可愛かったのに、先越されちゃって残念」
あっけらかんとして言う雪ちゃん。
雪ちゃんは包むことも隠すこともせず、あたしに、日頃どんな子と何してるか、ナニしたかどうかまで教えてくれる。
別にいいけどさ。
「ショック?」
「何がよ?」
「夏美ちゃん、修ちゃんのこと好きなのかと思って」
「は?」
「だって昨日、俺が寝てる間も仲良さそうだったじゃん? 寝惚けてたけど、俺何となくはふたりの会話、聞こえてたし」
だったら起きてくれればよかったのに。
あたしは何も、望んで修司くんと会話してたわけじゃないんだから。
「修ちゃんね、いいやつだよ。あんなんだからわかりにくいとこあるけど、確実に俺よりはいいやつだから」
「どっちもどっちでしょ」
「いや、でもマジで。修ちゃんと夏美ちゃんは似てるから、俺いいと思うけどね」
どうだってよかった。
こんな会話に意味はない。