午前6時、車はあたしの家の前に到着した。
閑静な住宅街のど真ん中で、恥も外聞もなく男に送られて朝帰りしてるあたし。
これはさすがにお母さんに怒られるかも。
あたしは体をひねって後部座席の方を向き、
「雪ちゃん! あたし帰るよ!」
と、一応、その体を揺すってみた。
雪ちゃんは「んー」と唸り、寝ぼけまなこをこすりながら、
「夏美ちゃーん。起きれにゃーい」
子供みたいにあたしに向かって両手を伸ばしてきた。
仕方なくその手を引いて起こしてやると、「チュウしてー」と甘えてきたので、あたしは呆れながらも、「はいはい」と言ってチュウしてやる。
「ん? 夏美ちゃん、帰るの? てか、今何時? ここどこ?」
「あたしんちの前」
雪ちゃんはきょろきょろして状況を確認する。
「すげぇ。俺今、タイムトラベルした気分」
「そりゃあ、てめぇが俺に運転させて、爆睡ぶっこいてたからだろうが!」
修司くんは死んだ魚のような目で睨む。
オール2日目の朝日は沁みるらしい。
ちょっと同情。
「とにかくあたしもう帰るからね」
あたしは雪ちゃんを突き飛ばし、車から降りた。
「ばいばーい。まったねー」
へらへら笑う雪ちゃん。
修司くんは何も言わず、車を走らせる。
隣の家のおばさんが物陰から覗いてたが、あたしは気にせず家に入った。