高校3年生の、7月。
早々に、地元の中レベルの私立短大に自己推薦入試で合格していたあたしは、受験でキリキリしている周りの連中をよそに、遊び呆けていた。
おまけにもうすぐ夏休みがやってくると思うと、余計に舞い上がっていて。
「あちぃねぇ」
「あちぃっすねぇ」
同じ私立短大に、同じように早々に合格している彩音とふたり、灼熱の陽の注ぐ窓辺でうな垂れる。
横でカチカチと携帯をいじる彩音の腕にあるでっかいブレスレットが、陽を浴びて金色に輝いていた。
うざいからそれ外せよ。
「ねぇ、それよりさぁ、夏美、今日の放課後、暇だよね?」
「んー?」
「ちょっと付き合ってほしいんだけど」
「どこにー?」
常に一緒にいるくせに、何を今更、と生返事で返すあたしに、彩香は、
「どこかはわかんないけど」
「は?」
さすがにあたしも怪訝な顔を向ける。
彩香はいじっていた携帯を閉じ、
「昨日さぁ、さっちゃんと公園で喋ってた時にナンパしてきた人らがいて、そんで今日、その人らと遊ぶ約束したんだけど、さっちゃん急にバイトになって」
「で、何であたし? また今度にすれば?」
「………」
「あぁ、そういうことね」
彩音の顔を見て、聞くまでもない、と思った。
彩音は多分、その『ナンパしてきた人ら』の中の誰かを気に入ったのだろう。
「だってさぁ、雪ちゃん超格好いいんだもーん」