だから、尚更失礼だ。

早く会社に行こう。


一度も振り返ることなく、俺は玄関から出た。

外は相変わらずの天気で、気持ちいい風が体を突き抜ける。


「………行こ。」


そう言って足を一歩、踏み出した。

























「……………………ない…。」



スーツのポケット

財布

バッグ

全部探したけど、ない。


御守りが、ない。


「どこやったっけ…。」


昨日の夜からの記憶を辿る。

確か公園で御守りを眺めてた。

そんで優奈を思い出して、…

手に持ってた記憶はあるんだけどそこからが思い出せない。


「……どーしよ…。」


唯一の思い出が無くなるなんて。

最悪だ。

仕事終わったら公園に行ってみよう。

まだ落ちてるかもしれないし。


「修也ー。昨日はお疲れー。」

「…葵」

「あ、昨日代行料金いくらだった?俺渡しそびれちゃって。」

「………え、代行?俺飲酒運転してないの?」

「は?何言ってんの?させるわけないだろ。記憶ないの?」

「……いや、良かった…。もう金はいいよ。それより御守り知らない?」

「まじ?さんきゅ。御守りって優奈ちゃんの?」

「うん、無くなってて」

「知らないけど…。」