「修也、今日飲み行こうぜ」
「ん?ああ…いいけど」
「もっと喜べよ!数少ない友達の葵様が誘ってんだから」
不満げにブーブー言う葵を見ながら少し笑った。
明らかに励まそうとしてる葵がなんだか可笑しくて。
不器用ながらの優しさに上手く応えられない。
「焼き鳥食べたい!」
「うん。葵の好きなところでいいよ」
「まじ!じゃあ焼き肉!」
「…焼き鳥は?」
「気が変わった!」
…こいつもこんな感じで女をとっかえひっかえするのだろう。
会社から2人して出たあと、俺の車で焼き肉屋に行った。
久しぶりに嗅ぐ油の臭いに吐き気がしたけど、せっかく葵が誘ってくれたから我慢した。
とりあえずビールで乾杯して肉を焼く。
ジューと音をたてて焼けていくカルビは美味しそうでたまらない。
お腹は減っている。
…なのに、唇がうけつけない。
ひたすらビールをがぶ飲みした。
「この前あのジジィがさぁ…」
肉を食べながら油が上司の愚痴をこぼす。
共感しながら笑う。
葵の大袈裟な話を笑いながら聞いてたら、こんなもんなのかな。と思った。
優奈が死んで、世界が終わったと思った。
もうあんなに幸せな気持ちになることはないと思った。
………だけど、今ちゃんと笑えてる。
楽しいと思ってる。
…俺の日常って、こんなもんだったっけ?