「あ、ごめん。行く」
心のこもっていない笑顔を浮かべ、修也についていく。
パンプスを履き、玄関から出た。
鍵を閉めて修也に問う。
「どこ行くの?」
"ゆうなってだれ?"
本当に聞きたいことは聞けずに胸に押し込む。
だってきっと修也の理想の女性なら、気になっても無理に問いただしたりしないでしょう?
修也に質問攻めだった私みたいに。
「晩飯。」
「あ、そういやお腹ペコペコ…。」
「な、俺のお気に入りの店で悪いけど」
「うん、大丈夫。」
「はい、じゃあ乗って」
止まっていた車の助手席を指差す修也
助手席…。
男性の助手席なんて、父親でしか経験がない。
相変わらず、恋愛経験0の私は胸を高鳴らせたまま。
やっぱり修也の理想には近づけないまま。
「失礼しまー…す…」
「おかしいよ。愛理。失礼しますって」
クスクス笑う修也
ああ、今日何度修也の笑顔を見ただろう
「だ、だって慣れてなくて…」
「男に?」
「お、男というか…あの、こんな展開というか…急展開で…頭が回らない…というか」
そんな私を見て修也はジッと私を見た。
…また、電気が体中をはしる。
ビリビリ、その目線が逸らされるまでは消えてくれない。
「あの、修也」
名前を呼んだ途端、唇に指を置かれた。
「………静かにして」
至近距離、修也の睫の揺れまで見える。