違うよ、私は"ゆうな"さんじゃない。


言えばいい。


…でも、言いたくない。




だって

言ってしまえば、夢が終わってしまう。



「…………なんで…?」



「…え?」


ボソリと呟いた彼の言葉を最後に、声は聞こえなくなってしまった。

少し安心したのもつかの間、

あることに気づく。


「………熱い?」


彼の体に触れると若干だが、熱を帯びている

そっと体を離して顔をのぞく。

うっすら汗をかいて頬が赤らんでいる。


…うそ。


「風邪ひいてる…。」


…意識が朦朧としてた?

だから私を…。



「だ、大丈夫ですか?」


体を揺らしても起きてはくれない。

口を開いてはゆうな、と呼ぶだけ。


「どうしよう…。」


絶対絶対放っておけない。

そばに居たいけどこんな場所じゃ風邪が悪化しちゃう…。



…家?


「………夏樹に怒られちゃう」


家に憧れとはいえよく知らない男の子をあげるなんて。


「………ゆうな」


…だけど…。