「………………。」


…………どうしよう。



勢い余って連れて帰って来ちゃった…。
















―――――……


私が見た彼は、遊具にもたれかかり力なく座り込んだ状態の彼だった。



「…………ゆう、な…」


呪文のように繰り返し呼ぶ名前。

誰のこと…?

彼女、かな?


「……あ、あの」


立ったまま震える声を抑えて声をかけてみる。


すると、やっと虚ろな瞳をこちらに向けた



ドキン、と胸が跳ねる。


初めて見た、綺麗な瞳。


女の子が好む整った顔立ち。


「…………ゆうな?」


低い声。


「あ、あの、あの、私っ」

「…ゆうな?おいで?」



優しく微笑んだ彼は、私に手招きをした。

意外と大きく、男らしい手は私の頬を赤く染まらせる。

でもどうしていいか分からなくて直立不動のまま。

だって急に会いたかった人が目の前にいて手招きしているのだから。


「なにしてんの?はやく」

「わ。わっ。」


グッと引っ張られた腕に体は反応出来ず足をつまづかせて転けてしまった。

彼の足の間に体をスッポリはまらせて、手は彼の肩。

…密着。

頭の中はもうパニック。

憧れの彼はもちろん、男の子とこんなに密着したことが全くない。

どうしたらいいのか分からなくてひたすら口をパクパクさせる。


「あ、や、あのっ。あの、私、」

「ふ、変なゆうな。どうしたの?」


ギュッと抱きしめられて更に体が密着した。

ああ…。

ダメだ。

クラクラする。


「………ゆうな」


わかってる。

この人は何を勘違いしてか私を"ゆうな"さんと間違ってる。

でも、胸のドキドキが収まらない。