じゃない、じゃない、じゃない、と最後の言葉がこの広すぎる庭にこだまする。


「有紀...じゃない?」

「私の名前は寺西ゆず。今日からここにお世話になる新入りだ」

「寺西、さん」

「そう、寺西ゆず。有紀さんとは何の関係も無い」

「っ、は。はは、そうですよね。取り乱してすみません、でした。

有紀は、もう、居ないのだから」


目の前の男子生徒は無理に口角を上げ、にこり、と笑ってみせた。しかし、ソノ目は急に生気をなくしたように光が無くし、有紀はもう居ないと自分に言い聞かせているようだった。




私はソノ目を鏡越しに見たことがあった。

生きる希望をなくして、死んだ目。
生きる意味をなくして、死んだ目。


(だって、)


ーーー君に何があったの?


(だって、それは)


この少年との出会いは、私の学園生活に大きな波紋を残すことになった。




(いつかの私の目と同じ)