「それで? 隼人くんを突き飛ばして逃げてきたってわけ?」
あたしはこれ以上ないほど顔を真っ赤にさせて、椅子の背を逃げれないようにお母さんに抑えつけられながら、椅子に座りコクリと頷く。
「全く………。あんたは一体何をしに言ったのよ。そこで、ちゃんと返事も聞いてこなくちゃ! 逃げてちゃ意味ないでしょ」
お母さんの言うことはごもっともです………。
返す言葉もございません。
未だにあたしの目にはあの時の隼人の間抜け面が焼きついて離れない。
でも、だって………あの時のあたしはパニくってて。
それに、あんな顔見た後で、黙ってあの場所で返事を待つなんてことできなかったよ。
あたしには、そこまでの勇気はなかった。
それに、告白するって言うより、つい口から滑ってポロッと出ちゃったみたいな感じだし………。
勇気どころか心積もりさえ、できてなかったよ………。
できることなら、あの言葉をなしにして欲しい。
今すぐにでも!
「まあまあ、早苗もそんなに美優ちゃんを責めないの」
怒っているうちのお母さんとは逆にニコニコとしながら、お茶をすすっているおばさん。
「だって、美鈴~…」