ザ―――…ザ―…




水道の蛇口から流れる水の音を聞きながら、あたしは無表情でカップやお皿を洗う。


この洗い物が終わったら、どうすればいいんだろう。


隼人が起きるまで待ってるの?


いつ、起きるかもわからないのに………。


あ~~~!


どうしよう?


今、無性に家に帰りたい!


締め出しを食らってくる状態だけど、もうあたしの頭の中には家に帰ることしかなかった。




「…美優?」


いきなり、真後ろから聞こえた声にビクッと持っていたカップを落としそうになる。


お、起きてる?


どうしよう?


声をかけられたけど、振り返れない。


「お前、どうしてここに居るの? お袋は?」


あたしが何も答えないことも気にせずに隼人は近づきながら聞いてくる。


すでに近かった距離が、また縮まった気がする。


やばいっ!


あまりに近い距離に、心臓が痛いぐらいにドキドキする。


「お、おばさんは、ウチの家に行ったよ」


顔を見ることもできずに、前を向いたままで言うべきことだけ言ったあたし。


「ふ~ん………。ところでさ………、どうしてお前は俺のほうを向かないわけ?」


「ひゃぁ!」


いきなり、ヒョイッと横から顔を覗きこまれ、あたしは反射的に体を飛び跳ねさせた。


かろうじて、洗い終わっていたためにコップなどを落として壊さなかったのは幸いだった。


「なっ、なに? その驚き方?」


あまりのあたしの驚きに反対に隼人のほうが驚いた顔をしていた。


だけど、ハッと隼人と視線があわさった瞬間、あたしはまたも視線を逸らす。


ムリッ!


2人っきりで、こんな風にいるなんて無理!


それに、これから告白なんて………絶対に無理~~~っ!