「どう? この茶葉」


「おいしいです。香りもよくて、少し変わった感じですけど、なんだか高貴な感じで」


「う~ん…。やっぱり、美優ちゃんに飲んでもらうと違うわ~。隼人やウチのパパなんて全然感想言ってくれないんだもの。せっかく、淹れてもなんだか、肩透かし食らっちゃって」


「男の人なんてそんなものですよ」


お茶を飲みながら、文句を言うおばさん。


本当、こういうのもすごく久しぶりだ。


いつもは、朝、隼人を起こして、その後おばさんの淹れてくれたコーヒーを飲む。


そんなことが当たり前だったのに、もう随分前のよう。


このリビングだって………。


懐かしみながら、あたしは目を細める。





 「さて…。おばさんは、美優ちゃんとお茶もできたことだし、美優ちゃんの家にでもお邪魔しようかな」


さっと立ち上がるおばさん。


突然のことに、あたしは声をだすこともできずに、ぽか~んと口を開ける。


え?

え?

え?


心の中では、『どうして?』という言葉ばかりが駆け巡る。


「お、おばさん?」


「隼人と話があるんでしょ? おばさんが居たら、話しづらいと思うから。隼人ここ最近、元気なかったから、美優ちゃんと仲直りしてくれたら、きっと元に戻ると思うわ」


立ち上がろうとしたあたしの肩を抑えつけた後にポンポンと叩くと、おばさんはにこやかな笑顔だけを振りまいて、家を出て行ってしまった。


いや……、おばさんは気を使ってくれたんだろうけど、逆に気まずいんですけど………。


第一、この誰もいない状況であたし1人がいるのもおかしいよ。


それに、隼人は寝ているのに、どうすればいいんだ?


起こすわけにもいかないし、第一、起こしに行く勇気がでない。


ど、どうしよう………。


うろうろとリビングの中をあてもなく歩きながら、とにかく落ち着かないので、さっき飲んだカップなどを洗って心を落ち着かせることにした。