「とにかく、行って来なさい。終わったらインターホンを押して。そしたら、開けてあげるから。あっ、そうそう。くれぐれも何もしないで帰ってくるようなことはしないでね。お母さんにはすぐにばれるんだから。それじゃ、健闘を祈る!」


どうしよう………。


お母さんがガッツポーズを扉越しにしているのが目に浮かぶんですけど………。


あたしは、ゆっくりと振り返り、そっと隼人の部屋を見上げる。


嘘でしょ~。


いや、自分の気持ちを隼人にはっきりと言うつもりだったよ。


だけど、まだ、心の準備が………。


それに………今、あの部屋にいるのが隼人1人だけとは限らない。


もしかしたら、香取さんと………。





そこまで想像して、あたしは頭を思いっきり振った。


今、思いっきり、いかがわしい光景が浮かんじゃった。


パッと見上げた隼人の部屋のカーテンが閉まっているのが、また想像を掻き立てる。


「あれ? 美優ちゃん? どうしたの?」


隼人の家の前でうろうろとしていたあたしに久しぶりの声が聞こえた。


「おばさん………」


「久しぶりね~。ここ最近、全然ウチに来てくれないんだもの。おばさん、寂しかったわ~。まあ、事情は早苗から聞いてるけど」


筒抜けですか………。


あいかわらず、綺麗でかわいらしいおばさん。


隣の家に住んでるって言っても、かかわりがなくなれば、結構、会うことも少なくて………。


あたしは、ニコニコと微笑むおばさんとは対照的に顔を引きつらせながら笑う。