あたしの言葉など無視でお母さんは話し出す。


あまりにも話し出すお母さんの顔が真剣だったから、あたしは何も言えなくなってしまった。


それに、今の状態ってお母さんがずっと言っていた通りだから、なんだかバツが悪くてまっすぐに見れないよ。


「い、一応………」


「フフフ………。それなら、お母さん何も言わない。素直になるのが1番だからね。美優に恋の駆け引きなんて絶対に無理なんだから、素直に自分の気持ちに従うこと。下手に駆け引きなんてしようとすると、絶対に返り討ちにあっちゃうわよ。それに…」


「あ~! もう、わかったって! 何も言わないって言ってたのに、充分、言ってるじゃない」


「あらっ!」


お母さんは、わざとらしく驚いたフリをしながら、口を手で覆った。


「ごめんなさい。つい、口が………。そんなことより、善は急げよ! 決めたら即行動! うじうじ悩んでいると、またにしようなんて先延ばしにしちゃうんだから!」


「えぇ!? ちょっと、お母さん!?」


お母さんはあたしの背中を押すと、あたしを家から追い出した。


ご丁寧に家のドアに鍵までかけて。


もちろん、いきなりのことで何も持っていないあたしは鍵を開けることなんてできない。


「ちょっ、ちょっと、お母さん!」


玄関のドアを叩きながら、お母さんを呼ぶあたしにドアの内側から楽しそうな声が返ってきた。