「その様子じゃ、なぜ隼人くんが怒っているのかわかってないみたいね」
「お母さんはわかるの? 隼人がなぜ怒っているのか……。別にいつもの会話の延長みたいなことしか話してなかったじゃない。それなのに………」
「そうね…。でも、ちゃんと真摯に考えれば気づくことよ。教えてあげたいけど、これは自分で気づかなくちゃ。だから、お母さんは教えてあげられません」
「え~~~~!?」
いつもは暢気なお母さんで、どう考えてもあたしのほうがしっかりしているはずなのに、どういうわけか今はお母さんのほうが上手みたい。
「『え~~~~!?』じゃないでしょ。もう、しっかりしなさいよね。これだと、あなたたちの物語、バッドエンドになるわよ」
忘れていた話を急にだされ、あたしは眉を顰めた。
それって………。
「まだ、言ってるの!? あれって、ただ設定だけを使うってことじゃなかったの?」
「そうよ。…でも! ある程度は、こうなんていうのいい雰囲気というものをだしてもらわないと、お母さんもストーリーにのめりこめないのよ」
なによそれ。
ただの自分のことじゃない。
「だから、ね!? 物語に波乱は必要だけど、このままじゃ、何も変わらないわよ!」
すごくアドバイスされているのはわかるんだけど、どうしてかな?
素直に受け入れられない。
だって、そんな風に言うけど、結局のところ、お母さんは小説のためにあたしと蒼が付き合うことを願っているからそう言うんだよね。
「遅かれ早かれ、こうなることだったんだよ」