「………隼人…。もう遅いし、買い物して帰ろうか……。お母さん、きっとお腹すかしてる」
「え? ……ああ…、目に浮かびそうだな。おばさんがお腹すかした姿」
深刻な話をしていたはずのあたしが急に違うことを話したことに驚きながらも、隼人は何も言わずに話を合わせてくれた。
お母さんの言う『隼人くんは美優には甘いから』、この言葉をあたしはやっと納得した。
そうだね…。
なんだかんだ言ったって、隼人は昔からあたしが本当に落ち込んだときは励ましてくれるんだ。
もしかしたら、あたしは長い付き合いの中で、それが当たり前だと思いこんでいたのかもしれない。
贅沢ものだね、あたし。
「隼人…。ありがとね………」
「はぁ? 何がだよ」
あたしの素直な言葉に、ちょっと頬を赤く染め、隼人はあらぬ方向を向く。
その仕草は、照れ隠しをするときの隼人のいつものクセ。
隣に隼人がいてくれてよかった。
隼人が幼なじみでよかった。
今日でやっとあたしは鳴海くんへの想いを封印して、前に進むことができる。