愛しそうに彼女を見つめる鳴海くん。


なんだか、めまいがしそうだった。


すると、いきなり、あたしは腕をグイッと引っ張られる。


「じゃあ、鳴海。俺たち、まだ用があるから」


鳴海くんたちが何か言うよりも早く、隼人はあたしの腕を痛いぐらい強く掴んで足早にCDショップを後にした。


「ちょ、ちょっと隼人?」


そんなに大きくないCDショップの店内はあっという間に出られる。


自動ドアを出ると、あたしは強く掴まれた腕をブンッと振って隼人の手から離した。


「急になんなのよっ! あれって、鳴海くんにすごく失礼じゃない。あんな急に!」


「じゃあ、お前はあのままあいつの話を聞いててよかったのかよ。あいつのあんな幸せそうな顔を見ながら、彼女の話なんて聞けるのかよ」


隼人の透き通る瞳にあたしの心の中は洗いざらい見透かされそうであたしは目をそらした。




隼人の言うとおり聞きたくなんてなかった。


聞かずに耳を塞いで目をそらして、この場から逃げ出したいって思った。


今、見たものをあたしの記憶から消去してほしかった。


あたし自身、もう諦めかけてた彼とのつながりにすがっている自分に気づいて驚いていたぐらいだもん。


彼女を紹介されて、ショックだった自分の気持ちに驚いた。


あたしの気持ちはまだ鳴海くんへの想いが溢れていたんだ。


………でも、やっと諦められる。


目の前であんなに幸せそうな顔を見せられたんだもん。


諦めるしかないと思い知らされた。