別に大きな町でもないあたしたちが住んでいるところ。


駅付近に大型のショッピングモールがあるぐらいで、買い物はそこでするしかない。


それ以外はほとんど店もないほどの町。


田舎町と言われるとそうではなくて、だからと言って都会でもない。


そんな中途半端な町。


「お~…、最後の1枚じゃん。やっぱ、人気あるんだな。この人………」


そう言いながら、うれしそうにレジに持っていく隼人。


あたしはその間に、新曲の視聴をしようとヘッドホンを耳に当てた。


ヘッドホンから選んだ曲が流れてきた途端、あたしは棚を挟んだ場所を歩く人を凝視してしまう。


えっ!?

え?

え~?


ワタワタと1人しているあたしはポンッと肩を叩かれただけでビクッとしてしまった。


「な、なんだよ。その反応は………」


支払いを済ませた隼人だったのだけど、あたしは目の前の隼人より棚を挟んだ向こう側にいる人物のほうに意識がいってしまう。


「あ………。俺、この曲好きかも………」


なんて言いながら、隣にいる女の子に笑いかける。


その姿が、あたしの胸に痛みを伴い、震えさせる。


そんな表情、今まで1度だって見たことなかった。


「鳴海………」


そんなに大きな声ではなかった。


でも、隼人の声に鳴海くんはあたしたちに視線を向けたんだ。


「あ………えっと……」


鳴海くんはあたしたち2人を見ながらも、何か言葉がでないみたい。


そんな鳴海くんの姿に隣にいた女の子はあたしたちと鳴海くんを不思議そうに見ていた。


あたしの視線は無意識のうちにその彼女に向けられる。


すると、あたしの視線に気づいた彼女はニコッと微笑んだ後に、ぺこりと頭を下げたのだ。


あたしも思わず頭を下げる。