「美優……。このアルバム、いつ買ったの?」


「へ?」


古い過去の気持ちに戻っていたあたしは現実に引き戻される。


慌てて声の聞こえてきたほうを見ると、隼人が片手にCDケースを持ち、あたしに見せてくる。


よく見ると、つい最近買ったお気に入りの女性アーティストのアルバムだった。


「ああ…、1週間前かな? 偶然、遊びに行ったら店内で流れてたから、もしかしてと思って見たら、出てたから」


「うわぁ~…、マジかよ…。俺、全然知らなかった、出てるの…」


じ~っとCDを穴が空きそうなほど見つめる隼人。


「貸そうか? それ……」


「いや、別にいい。借りるとか以前に、俺が自分で欲しいから。この人のは全部そろえてるんだ」


「ふ~ん……。まあ、人気あるもんね。今から買いに行くなら付き合おうか? あたしも、今から夕食の材料買いに行くし」


あたしの言葉に隼人は机の上に置いてあるデジタル式の置時計を見る。


「今からだと、だいぶん遅いぞ。お前、その後から夕食作るの?」


「まっさか~。今日はもう疲れたから、惣菜で済ませる。今の時間ってタイムセールしてるし割引シールも貼られる時間なんだよ」


自信満々のあたしをまるで哀れんだような目で見てくる隼人。


「何よ~! その目は~!」


「いや~……。お前、その発言は主婦の発言だろ。それもだいぶん、年季の入った。新婚ではそんな言葉は出てこないだろうからな………」


親友の麻衣にも言われたその言葉を、まさか隼人にまで言われるなんて………。


「わ、悪い!? 仕方ないじゃん。ウチはあたしがしなくちゃ、誰もしないんだから!」


プイッと顔を背けるあたしを隼人は急になだめだした。