「まあ、鳴海は男の俺から見てもかっこよかったもんな………。もしかして、お前、今も鳴海のこと好きだったりするの?」
「ハア? もう会わなくなって2年近くにもなるんだよ。いくらなんでもないない!」
隼人には手を振って否定するけど、実をいうと、まだ少しだけ思いは残ってる。
そんなあたしの心の中を見透かすように、隼人はあたしを一瞥した後、『ま、いいけど』と呟き、本棚の中を物色し始めた。
鳴海悠斗くん………。
会えるなら、今でも会いたいと思う。
同じ校区だから、会える確率は高いはずなのに、もともと縁が薄いのか駅で見かけたりということさえない。
でも、会えなくてホッとしているあたしもいるんだ。
高校に入ってすぐに聞いた噂。
鳴海くんに彼女ができたこと。
相手は同じ中学出身の藤村さん。
なんとなく予想はしてた。
女子とあまり話さない鳴海くんが唯一仲良く話す相手。
それに、藤村さんは優しくていい子だから、きっとくっつくのも時間の問題だとは思っていたけど、聞いたときはそれなりにショックだった。
あたしなんて遠巻きから見てるだけの存在なのに、それでも一筋の望みにかけちゃっていろいろといいほうに考えちゃうんだ。
きっと、鳴海くんはあたしの名前さえも知らないと思うのにね。