「ハァ~……。あの話、もう小さい頃から何度も聞かされてる。耳にタコができるほどだよ~……」


「俺も。俺も母さんから何度も聞いた」


「えっ!? 隼人も?」


ベッドに仰向けに寝転がっていたあたしは勢いよく体を起こし、少し離れた位置に座る隼人のことを見た。


隼人はあたしの部屋の本棚からCDを出して見ながら、こちらを見る。


「ああ……。小さい頃なんて、俺は絶対、美優と結婚すると思ってた。あれはいわゆるすり込みってやつだな」


「そ、そうだったの………」


ホエ~としながらあたしはボ~ッとした眼で隼人を見る。


「俺さ、小学校の時までその考えは持ってたんだぞ。でも、お前が違うクラスの…え~っと……、なんてやつだったっけ。あ、そうそう、鳴海(なるみ)って奴のことが好きだって言ってて、それですぐに気づいたよ。あれは、親が言ってるだけだって」


思わず出てきたカミングアウトにあたしは、何も言えなくなってしまう。


そりゃ、あたしだって小さいときは『隼人くんのお嫁さんになるっ!』なんて、言ってたけど、すぐに気づいた。


あたしたちは小さい頃から一緒にいるから、そう思うだけだって。


どんなこともいつも一緒。


隣にいるのが当たり前だと思っていたから。


だから、成長するにつれていろいろなことが見えてきて、違う異性にも出会って、隼人だけの世界から抜け出さなきゃって小さいながらにあたしは思ったんだ。