「あの………。おばさん。設定や構成などは俺は使ってもらって構わないです。でも……、美優も嫌がってることだし、嫌がってる人の話なんて、おもしろくないと思いますよ。だから、設定のみの利用でそれ以外はおばさんの今までの実績でなんとかできないですか?」


あたしたち2人の言い合いの仲で唯一まともな意見のその言葉。


隼人さえも言いくるめちゃうかなと思っていたけど、お母さんは突然シュンとした顔をする。


「確かに…隼人くんの言うとおりだわ。無理やりの話なんて、スカスカできっとおもしろくなんてない…。読者は厳しいんだもの」


お母さんはソファの背にもたれると『フゥ~…』と息を吐いた。


「わかったわ。諦めます。でも、設定は使わせてもらっていいかしら? 幼なじみのリアルな2人として」


「…その言葉に、裏とかはないんでしょうね? ちゃんと、本当の本当にそう思ってる?」


さっき騙されてたこともあり、あたしは疑わしい目をお母さんに向ける。


「本当にそう思ってます。………まあ、お母さんとしてはあなたたち2人がくっつくのはうれしい限りなのよ。美鈴とは小さいときにお互いの子供が異性だったら、絶対に結婚させようって言ってたし………」


うわ~………。


この話になると、止まらなくなるんだよね。


お母さんは、あたしと隼人の冷たい視線などものともせずに、話を続けている。


「隼人………。あたしの部屋行こう。この話、延々に続くよ」


コソッと隼人の耳に囁くあたし。


隼人はコクリと頷いた。