「そ、それって、つまり、あたしのこと騙したってこと!? 諦める振りしてぬか喜びさせて!」
背の低いテーブルを思いっきりあたしは叩く。
あまりに叩きすぎて、手のひらがじ~ん…と痛かったがそんなの無視だ!
「何よ、騙しただなんて人聞きの悪い。ただ、やり方を代えただけ。恋人のフリをしてもらうのは諦めるわ。でも、2人を観察しながら書くことに決めたということ。だから、この話の2人がくっつくかくっつかないかはあなたたち2人にかかってるのよ」
まさに、語尾に『おほほほほ』と付きそうなほどの言い方でお母さんは言ってくる。
つまり、くっつくかくっつかないとか以前に、この話がおもしろくなかった場合はあたしたちのせいだとでも言っているようなものじゃない。
「お母さん、はっきり言っておくけど、恋愛モノのように突然の運命的な出会いとか、胸がときめくようなシチュエーションなんて現実には起きないからね。あれは、人が想像するからこそ起こりうるストーリーなんだよ。それを、あたしたちに求めても絶対に無理だから。体よくライバルが現れたり、三角関係が起こったりなんてないから」
「でも、隼人くんは学校でももててるんでしょ? それなら、ライバルの1人や2人どころの話じゃないぐらいいるんじゃない? そうだっ! 秘密の恋なんていうのもいいわね」
ああ言えば、こう言う。
まさしく、今のお母さんはそんな感じだった。
何を言っても無駄なような気がした。
きっと、お母さんはお母さんであたしが諦めるのを待ってるんだと思うけど………。
こうなったら、どちらが諦めるかの持久戦だ。