「美優はさ。どうして、恋人のフリが嫌なの? 俺、あんまり深く考えてなかったから受けたんだけど、もしかして、いろいろとやばいこととかあるの? キスしろとか、抱き合えとか」


うっ………。


そんなにストレートに聞かれると………。


確かにお母さんのことだからってあたし考えてたけど、別にお母さんから詳しいことは聞いてないんだよね。


ただ、その場の雰囲気とかを知りたいのか、それとも恋をするあたしたちの設定が必要なのか………。




何も答えられずにいるあたしの頭の上に思いっきり深くため息をつく隼人。


「わかった………。そんなに嫌なら、俺からおばさんには断っておくよ」


「ホント? 隼人!」


思いもかけない隼人の言葉。


もう諦めかけてたところだったから、まさに天からの助け!


「ああ……。今すぐは無理だけど、学校から帰ってきたらお前の家に行くよ」


あたしは両手の指を交差しながら合わせ、『うんうん』と頷く。


「うん! あたし、待ってるからね! ありがと、隼人!」


「まったく………。さっきまで俺のことけちょんけちょんに言ってたくせに、ゲンキンな奴だな………」


手のひらを返したようなあたしの態度に隼人は呆れ顔。


「まあまあ、そう言わずに。ほらっ、今日のお弁当。明日は、隼人の好きなものばかり入れるからね!」


勢いよくサブバックから大きいお弁当を出して、隼人の手にチョンと乗せる。


「おお……、サンキュ」


乗せられたお弁当のナプキンで包まれた先っぽを摘みながら、隼人は礼を言う。


んん?


すぐに気づいた違和感。