ちなみに、あたしの名前の美優という名の美という字はおばさんの美鈴という名からもらってる。
実のところ、ウチのお母さんとおばさんは高校の時からの大親友。
全く正反対の2人がどうして大親友なのか、そこはちょっと謎だけど………。
「いつも、本当にごめんなさいね。家のことだけでも大変だろうに、ウチの子の面倒まで見てもらって………」
「あはは………。もう、馴れちゃいましたから」
あたしはコーヒーを飲み、フ~と息を吐いた。
ああ………、落ち着く。
家ではほとんど、自分でしてるから、この朝のおばさんが入れてくれるコーヒーってすごくありがたい。
「それにしても、遅いわね。隼人ったら………」
おばさんは椅子から立ち、階段を上っていく。
まさかとは思うけど、2度寝なんてしてないわよね………。
あんなに言ったんだから。
嫌な予感が頭をよぎるが、あえて考えないようにした。
「もう、隼人! 美優ちゃんが待ってくれてるんだから、さっさとしなさい!」
「わかってるよ………。うるさいなぁ………」
あんなに優しいおばさんに向ってなんてこと言うかな、こいつは!
あたしは、ゆっくりと欠伸をしながら、リビングに入ってくる、だらしなく制服を着崩
した隼人を冷たい目で見ていた。
「なんだよ」
あたしの視線に気づいたのか隼人はあたしに目を向ける。
「別に………」
「『別に』じゃないだろ。さっきの目は、何か俺に対して変なこと思ってただろ?」
「さあね………」
「『さあね』じゃなくて………ま、いっか。ほれ」
あたしの隣の席に座りながら、隼人は私に手をだしてくる。
それは、明らかに何かを催促している様子。
いつものことだから、何を言いたいのかわかってたが、あたしはあえて知らないふりをした。