おばさんは片手を頬につけ、困ったような仕草をする。
やっぱりかわいい………。
あたしの母、早苗は一応、人気小説家だったりする。
本人曰く、ただの小説家だったらダメなんだって。
必ず小説家の前には人気をつけるようにうるさく言われている。
だけど、悔しいことに実際に人気小説家なのだから文句も言えない。
「それにしても。じゃあ、家のこと大変なんじゃない? ご飯とか大丈夫? もしよかったら、ウチに食べに来る?」
コーヒーに口をつけようとしたあたしは慌てて手を振る。
「大丈夫です。いつものことで馴れてますから。それに、逆にあたしがご飯作らないとお母さんが飢え死にしそうなんで………」
「まあ………。うふふふふふ」
笑うだけで否定してこない。
おばさんとウチのお母さんは良く知った仲。
あたしの言っている意味に納得しているんだろう。
ウチのお母さんが家事というものをしているのを、あたしは見たことがない。
ごくたまにしているが、果たしてあれが家事と呼べるものなのか………。
ちなみに、お父さんはそんなお母さんにぞっこんのため、小さな頃はあたしの記憶では家事はほとんどお父さんがしていた気がする。
そんなお父さんに、仕事も家事もと気の毒に思ってしまったあたしは結局、家事全般が身についてしまい、まだ高校生なのに、今では一家の主婦のようになってしまっている。
ここ最近、友達にも若々しくないって言われてるんだけど、それって、これが大いに関係しているよね。