「あたしが原因なら、あたしもきちんと話の中に入る。こんな風に香取さんが言われているのを黙って収拾をつけるなんてダメだと思うから!」
ギャルが何を言っているんだというような目であたしを見てくる。
ぎろりと睨んでくるからまた怖い。
だけど、あたしはキッと彼女の目を見つめ返す。
ほとんど、意地に近かったけど………。
「こんなに一方的に責め立てても、香取さんも言いづらいと思う。きちんと聞いてあげないと」
「そんなこと言うけど、紀子は泣いてるだけで全然言おうとしないじゃないかっ! 何も言わなければ、話してくれるとでも言うの!? 馬鹿らしいっ」
フンッと顔をそむけるギャルにあたしの後ろから弱々しい声が聞こえてきた。
「……ごめ…ん…なさい………。ヒック……私……南条くんと…本当は付き合ってなんてない………」
泣きながらも途切れ途切れに話す言葉に、目の前のギャルは目をまん丸にして見開いていた。
隼人は香取さんとは付き合っていないとずっと言っていた。
だけど、香取さんは付き合っていると思っているとあたしは言ったけど、香取さんもきちんとわかっていたんだ。
隼人は付き合っていないって………。
「何よ、それ……。じゃあ、付き合っているって………嘘ってそのことだったの……?」
まさしく放心状態とばかりのギャルは力なく笑い出した。
だけど、笑いながら涙を流している。
笑っているはずなのに、彼女の声はむなしく教室に響いて………その声は途中から泣き声に変わっていた。
そんな姿を見た香取さんも「ごめん…」とただ何度も泣きながら呟いていた。
こんな風にしてしまったのは、香取さんに嘘をつかせてしまったのはきっと、あたしにも責任がある。
自分の気持ちを全くわかろうともしなかったあたし。
何も知らないフリをしていたあたしのこの優柔不断な態度が隼人や香取さんを傷つけていたんだ。
そのことがわかっているのに、あたしは何も言うことができずにただ、2人が泣いている姿を見ていることしかできなかった。