「もう………、疲れた……。嘘も、それが思い通りにならないからもっと嘘を重ねて………。どんなに嘘を吐いたって、どんなに南条くんの彼女だって周りから固めたって、南条くんは私のものになんてならない!」



一気に言い放って顔を手で覆い、その場に泣き崩れながらしゃがみこむ香取さん。


なんだか、いつもは大きく見える彼女が、今はとても小さく見える。


「ちょっと、どういうこと? 嘘ってなに? 何が嘘だって言うのよ!」


ギャルはしゃがみこむ香取さんの肩に手を置いて思いっきり彼女の体を揺する。


「黙ってないで、何か言いなさいよ。ねぇ!」


それでも香取さんは泣きじゃくるだけで何も言わない。


あまりにも揺する力が強すぎて香取さんがどうにかなってしまいそうで、あたしは思わず間に入ってしまっていた。


「止めてっ! そんなに香取さんを責めちゃ、香取さんが壊れちゃいそうだよ」


「何よっ、そもそもアンタのせいでこんなことになってるんでしょっ! 自分は知りませんみたいな顔で割り込んでこないでよっ!」


怒り狂う形相があまりにも怖くてまるで般若のようだった。


思わず尻込みしてしまいそうだけど、あたしは立つ足に力を入れる。


そうだ、この人の言うとおり、2人の言い合いだけど、その中心にいるのはあたしと隼人だ。


それなら、あたしもちゃんと戦わなくちゃ。


何と戦うのかはわからないけど、逃げてるだけじゃダメなんだ。




『恋は自分で掴むもの』




お母さんが昔書いた小説に書かれていたフレーズ。


そういうことなんだよね、お母さん。