たとえ、香取さんが『もういい』と言っても、ギャルは全然納得できないみたい。
そりゃ、あたしのこと引っ叩こうとしていたぐらいなんだもん。
そんな一言で納得なんてできないよね。
ギャルは何も言わない香取さんにどんどんと詰め寄っていく。
「どういうつもりよ! あたしはあんたのことを思って」
「だから、もういいって言ってんのよ! 話をややこしくしないでよ。どうしてこうなるのよ。私の思うとおりになんて全然ならないっ!」
ヒステリック気味に叫ぶ香取さんに、教室中がシーンと静まる。
「誰も自分の思い通りになんてなるわけないだろ? 人は人形じゃねぇんだよ。ちゃんと意志を持っているんだからな」
静寂を破ったのは隼人の冷たい一言だった。
隼人はじっと香取さんを見つめると話し出した。
「俺も悪かった。お前からの告白を受けときながら、断った後もきちんと対処すべきだった。それをなし崩し的にしていたからお前が期待を持つようなことになったのは悪いと思っている。だけど、俺が好きなのは今も昔も美優だけなんだ。だから、もし、それでも気が済まないなら、美優じゃなく、今度は俺に直接言ってきて欲しい」
隼人はそれだけ言うと、頭を下げた。
「本当にごめん! みんなも、俺が美優と付き合うことに何か文句があるなら俺に言ってきて。ずっと美優を好きだったのは俺で、美優は俺の気持ちに答えただけだから」
「隼人………」
違うでしょ。
隼人に気持ちを伝えたのはあたしのほうからだった。
だけど、隼人は全部、あたしに矛先が向わないように自分が被ろうとしてくれている。