あたしが教室に入った瞬間、みんなが水を引いたようにシ~ンと静まり返る。
なんとなく予想はしていたけど、なんだか実際に受けるとショックだな~…。
それに、この反応を見ると、みんなあたしと隼人のことは知っているんだよね………。
あたしは、とにかく平静を装いながら、自分の席へと歩いて行く。
それだけのことなのに、みんなの視線が痛いようにあたしを追いかけてくる。
今までこのクラスで、これほどの注目を受けたことなんてあたしはなかったと思う。視線が痛い………。
あたしはとにかく自分の席に座り、鞄から教科書を取り出す。
この状態がいつまで続くのかはわからないけど、とにかく今は我慢だ。
ギュッと手を握りしめ、あたしは決意を固く持つ。
でないと、すぐにでも逃げ出してしまいたくなりそうだったから。
決意を固くしたところで、いきなり後ろの閉じていたほうの教室の扉が勢いよく開けられた。
あまりの勢いに一斉に振り向いてしまう、あたしを含めたクラスメイトたち。
「ちょっと、佐倉美優ってどこよっ!」
茶髪で化粧の濃い、いかにもギャルっぽい女の子がいきなりあたしの名前を呼ぶ。
クラスメイトが固まって誰も答えないのをいいことにズンズンと入ってきたと思うと、彼女はあたしへと視線を向けてきた。
「あ……いたいた。あんたさぁ~、大人しそうな顔してやることやってくれるじゃん」
いきなりあたしに近づいてきたかと思うと、彼女はあたしの襟元を前触れもなく掴んできた。
今までにこんなことやられたこともないあたしは、掴まれたと同時に首に圧迫を受けて思わず彼女の手を掴んでしまった。
だって、苦しい………。
だけど、その行為が逆に彼女の怒りを買ってしまったらしく、あたしはドンッと胸元を押されてしまう。