「だから、俺がこんな風に外面をよく見せるためにしていたのは、全部美優に好きになってもらうためだったんだよ」


言い終わってから、顔を赤くして手で扇いでいる隼人を見ながらもあたしには納得が全然いっていなかった。


ますますわからないんだけど………。


隼人はあたしのために猫被ってたんだよね。


それも学校だけで。


でも、それはあたしに好かれるためで………。


でも、学校だけ。


あの~…、あたしのためと言われても全然説得力ないよ。


だって、いくら猫被られても、あたし、隼人の本性も知っているし、学校だけでされても家に帰ってからも会うあたしたちの間ではそれは全然役に立ってないよ。


「隼人~……。その話、突っ込みどころ満載なんだけど、どうしたらいい?」


あたしの指摘に、隼人は『うっ……』と苦虫を噛み潰したような顔をした。


きっと、隼人も自分でわかっているんだ。


全然、自分がしていたことは役に立っていないことを。


だって、あたしでさえ気づいたんだよ。


そのへんてこりんな作戦がダメダメ作戦だって。


隼人もいくらなんでも気づいてたよね。


「とにかく、そういうわけだ。だから、今さら自分を作る必要なんてないから気にするな。俺は地のほうが結構楽だったりするし、そろそろ潮時かもしれないと思っていたところだから」


頭を軽く叩いて、眉を下げながら笑う隼人。


隼人がそこまで言うのなら、あたしはもう何も言うことなんてない。


今日の学校はきっと荒れる。


その荒れる原因は間違いなくあたし。


そのことを考えると気が重くないと言うと嘘になってしまうけど、あたしはもう逃げないって決めたんだ。


あたしはギュッと隼人の手を握った。


それに答えるように隼人もあたしの手を握り返してくれた。