「あっ……。いや、別に美優に言えないことじゃないんだけど…、なんとなく恥ずかしいというか………」


「わかった………。あたしも、なんとなくそんなこと聞きたくないからいい!」


「えっ?」


やっぱり、隼人がここまで渋る理由なんて………。


きっと、昔好きだった子の話なんだ。


そんな話なんて聞きたくない!


「ちょっと、待てよ。美優、何か勘違いしてないか?」


プイッと顔を逸らしたあたしに回り込むようにして隼人はあたしの視線の中に入ってこようとする。


「勘違いなんてしてない。隼人が言いたくないことなんだもん。あたしも隼人が昔好きだった子の話なんて聞きたくないもん」


そうだそうだ。


誰が、わざわざ昔の好きだった人の話なんて聞きたくなるのよっ!


ありえないから。


「ハァ~……。お前、やっぱり誤解してんじゃん」


あからさまに目の前で大きなため息をつかれて、あたしは眉を顰める。


「あたしのどこが誤解しているって言うのよっ!」


「俺、好きだった人のことだなんて一言でも言ったか? まあ、好きな奴のことが入ってくるのは当たってるけど」


「ほらっ、やっぱり!」