「お前の幼なじみ。今日は機嫌でも悪いの?」
二岡が不思議そうにあたしに聞いてくる。
そんなのこっちが聞きたいよ。
さっきまでは別に普通だった。
いつもどおり、女の子の相手もする気でいたみたいだったのに………。
「まあ、幼なじみでもわからないことぐらいあるよな。幼なじみは所詮幼なじみなだけだし」
隼人の後姿を見ていたあたしに二岡は笑いながら言ってくる。
『幼なじみは所詮幼なじみ』……か…。
確かに、二岡の言うとおりかもしれない。
今まではずっと一緒にいたけど、これからも一緒というわけじゃない。
あたしたちはもう2年だもん。
進路がすでに目の前まで見えている。
高校まではかろうじて一緒だったけど、さすがに大学も同じとは思えない。
そう考えると、この幼なじみの関係もこの高校生活で終わりなのかもしれない。
「ところで、佐倉………。宿題は?」
横からしゃがんだ体勢で上目目線できらきらした目であたしのことを見てくる二岡。
そんな二岡をあたしは一瞥した後、
「見せません!」
一刀両断した。
ガクッとその場で項垂れる二岡を置き去りにしてあたしは昇降口へとさくさくと歩いていった。