その日。
あたしと隼人は付き合ってから初めて、手を繋いで登校した。
この行為が、全校生にあたしと隼人が付き合っていることを証明することだというのはわかっている。
だけど、そうすることであたしは自分の気持ちからも誰からも逃げないと誓ったのだ。
知られないでいようとしていたのは、やっぱりあたしに逃げの気持ちがあったから。
そんなあたしだと香取さんも納得してくれるわけがない。
あたしは正々堂々と香取さんと向き合おうと決めた。
あたしは隼人が好き。
この気持ちは本当だから、もう逃げない。
「え? どういうこと?」
「あの2人ってただの幼なじみじゃなかったの?」
「ただの幼なじみはこの年になって手なんて繋がないでしょ」
「でも、南条くんって香取さんと付き合ってなかった?」
「なに? どういうこと?」
みんなの視線が痛いほど突き刺さってくる。
そんなことを言われるのはわかっていたこと。
だけど、やっぱり予想と現実とは違う。
思っていたよりも、みんなの視線は痛かった。
「あれってさ~…、やっぱり、幼なじみであることを利用して香取さんから南条くんのこと奪ったんじゃない?」
「え~~~? それって、最悪~~~」
「大人しそうな顔してやることはやるよね~」