「おっ、朝からすごいな。お前の幼なじみは」
ゆっくりと校門をくぐろうとした時にあたしは後ろからポンッと肩を叩かれる。
「あ………二岡。おはよ」
あたしが軽くいつもの通り挨拶をすると二岡は白い歯をニカッと見せて笑う。
こいつは二岡真人(におかまさと)。
1年の時からのクラスメイトで2年になった今も一緒の腐れ縁の仲。
男でありながら、結構話が合う、あたしからしたら隼人以外で仲のいい唯一の異性かな。
それに、サッカー部に所属しているだけあって、意外と真面目。
毎日あんな二重人格的な性格の隼人の相手をしているあたしとしてはまともな二岡は新鮮だし、すごくホッとする。
それに、あたしにはよくわかんないんだけど、二岡って下級生に人気あるんだよね。
まあ、隼人とは次元が違う話だけど………。
「ところでさ。佐倉、今日の英語のリーダーの訳やってきた?」
「リーダー? うん。宿題で出てたじゃない?」
軽く言うと、二岡は急にあたしの前でパンと手をあわせて頼みだした。
「佐倉! その宿題見せて! 頼む」
「え~~~!? また~~~?」
じろりと目を細め、あたしは嫌そうにニ岡を見る。
こいつのこの頼みはこれで数えて何回目か………。
はじめは、仕方ないし、ちょっと可哀想かなとも思ってだした仏心。
それに味を占めてきたのか、ここ最近では毎日のようにこいつはこんな風にあたしに頼み込んでくる。
たまたまだと仕方がないからとも思うけど、こう毎日じゃ、ニ岡のためにもならない。
「今日はダメ」