あたしはなんとなく言いづらくて黙ってしまう。
なんとなく、いじめられているのかもしれないと自分からは言いづらいし、知られたくないと悪あがきなんだけど思ってしまう。
だけど、阿部さんはなんとなく事情を知っているみたいで、深くは追求してこなかった。
その代わりにあたしにこう聞いてきた。
「下駄箱………もしかして、どうかしてたんじゃない?」
遠まわしに聞いてきたことだけど、あたしはごくりと喉を鳴らす。
阿部さんは何かを知っている?
そんな気がした。
そして、そう思ったのはあたしだけじゃなく―――――
「えっ!? もしかして、阿部さん。何か知っているの?」
あたしよりも先に麻衣が阿部さんに食いつく。
そんな麻衣の勢いに1歩後ずさる阿部さん。
「えっ? あ………知っている…というか、見た………というか………」
「なにっ!? 何を見たの? 教えて、阿部さん!」
言葉を濁す阿部さんの肩を掴み揺する麻衣。
あたしは逆に麻衣の勢いに呆気に取られて、何も言えずにただ聞いていただけだった。
「う、うん。実は………私、部活の朝練で早めに学校に来てたんだけど、いつもなら直接部室に行くんだけど、今日だけはあたしが体育館を開ける係りで職員室に行くために昇降口に向ったの。そしたら………ウチのクラスの下駄箱の前で立ってごそごそしている人が見えたんだ」
「それで?」