「大丈夫だった? 美優」
席に着いたあたしに麻衣が心配そうに聞いてくる。
はっきり、きっぱりの麻衣はいつもは冷たい態度なのに、めずらしく心配してくれている。
あたしは職員室でスリッパを借りると、隼人につれてきてもらってクラスへと入った。
その時に、隼人が麻衣に何か言っていたみたいだからきっと、下駄箱のことを話していたのだろう。
あたしは麻衣の顔を見ると、力なく笑う。
「……一応………。だけど、結構ショック大きいね………」
「まあ、そりゃね………。だけど、一体誰が……。全く、陰険な奴! 私、こうやってこそこそ隠れてするような奴が1番嫌いなんだよね。気に入らないなら正面から来いっての!」
言いながらヒートアップしてきたのか、麻衣の声はどんどんと大きくなってくる。
挙句の果てにはクラス中の注目を集めていた。
「麻衣………。声が大きいって………」
シ~ッ…と指で口を遮るあたし。
だけど、麻衣は聞く耳持たず。
「だって、ムカツクじゃない! あ~~~~っ! 腹が立つ~~~!」
「あの………」
怒りくるっている麻衣の声にかぶさるように、細い声が聞こえてきた。
あたしはそちらに目を向けると、同じクラスの阿部さんが戸惑いながら控えめに立っていた。
「阿部さん、何?」
怒っている麻衣の口を塞いで、あたしは阿部さんに声をかける。
阿部さんは、少しの間、目を泳がせながらこちらを見てきた。
「そのスリッパ………。上履き……どうかしたの?」