異変はすぐに翌日からあった。
それは、隼人と一緒に登校しているから誰の目にも止まっているからだと思っていた。
だけど、それはあたしが下駄箱を開けた瞬間に変わる。
「!!!!!」
声に出せない驚きだった。
思わず、下駄箱を開けたまま持っていた鞄をその場に落とし、微かに体が震えてしまう。
「どうした? 美優」
下駄箱の前で立ち尽くすあたしに隼人が怪訝に思ったのだろう。
隼人はゆっくりと歩いてくるとあたしが固まっている下駄箱を覗き込む。
「なっ! なんだよ、これ!」
隼人が驚くのも無理はない。
あたしの下駄箱の中には水浸しのあたしの上履きと『死ね』と赤いペンで書かれている何枚もの紙が入れられていた。
これまで、自分がいじめにあったことなんてない。
だけど、これがいじめだということがあたしにはわかった。
「とにかく、こんな上履き履けないから、職員室でスリッパでも借りよう」
隼人の言葉にコクリと頷くあたし。
隼人に背を支えられながら、あたしはやっとのことでゆっくりとだけど歩いていける。
「一体誰がこんなことしたんだよっ!」
隣で怒っている隼人だけど、あたしは誰がやったとかそんなことよりも自分がされたことのショックのほうが大きくて何も考えることができなかった。
これで、今日のこのことだけで終わるだろうか、それともこれからもこんなことが永遠に続くのだろうか?
別にあたしは打たれ弱いほうではないと思っていた。
だけど、このことはあまりにも衝撃的で打たれ強い、打たれ弱い以前にあたしの心を深く抉った。