「そんなの、あんたと香取さんが別れて、無事に丸くおさまるようにでしょ!」
「なんだ………。そんなことか………」
殴られた頭を軽く擦りながら、あっさりと答える隼人。
痛いところを突かれて、もっと焦るかと思っていたのに意外………。
「それなら、もう片付いたよ。さっさと話してきたから」
「えっ!? もう、決着ついたの?」
「ついたよ。だから、初めから言ってただろ? 俺と香取はもうとっくに切れてるって。それにだいたい、元から付き合ってないって………」
隼人は『付き合っていない』と何度も言うけど、頼まれて1ヶ月だけでも付き合ったのは、あたしは付き合っていたということになると思うんだけど………香取さんもきっとそう思っていたんじゃないかな?
「これで、俺と美優は正真正銘の彼氏と彼女だな」
あたしの心中など気にもしないで、ニコニコと笑う隼人。
うわ~…、今すっごく引っ叩きたい。
すっごい、ムカツク。
隼人はニコニコとしながら、あたしの手を握るとグイッと引っ張る。
今朝は、『まだ、付き合っていない』と拒否した手だけど、隼人も一応怪しいけど、無事にはっきりさせたみたいだし、断ることができなくてあたしは仕方なく隼人の手に握られるようにした。
「明日は、学校中に交際宣言かな?」
「………馬鹿じゃないの」
隼人の馬鹿な発言に冷めた口調で突っ込むあたし。
これまで見せたこともないようなうれしさで笑う隼人を見ていると、あたしはそれ以上何も言えなくて、ただ隼人と手を繋ぎ、学校を後にした。