二岡との話も無事に終わり、あたしは昇降口にある自分の下駄箱の前へ歩いていた。
すると、あたしの影が前に佇む人の足とぶつかる。
「遅いっ!」
その声に慌てて顔を上げると、腕を組んで下駄箱に背をもたれかけ隼人が立っていた。
「…え? 隼人?」
「『え?』じゃないだろ。今、何時だと思ってるんだよ。今村(いまむら)に聞いたら、お前がアイツと教室を出て行ったって聞いて、俺心配してたんだぞ」
麻衣ったら、きちんと断ることも話していたのに、隼人にどういう言い方したのよ。
「二岡にきちんと話してきたのよ」
鬱陶しそうに絡んでくる隼人を横目で見ながら、あたしは自分の下駄箱から靴を取り出す。
「それで!? どうなった?」
隼人はここが校内だということも忘れ、いつもの猫かぶりも忘れて興奮気味に聞いてくる。
絶対今の隼人の姿を見たら、幻滅する女の子っていると思う。
いつもはクールで優しい王子様みたいなのに、これはなによ。
熱血漢バリバリじゃない。
まあ、本当の隼人はこうなんだけどね。
あたしは呆れながらも息を吐いて答えた。
「きちんと、断ってきました。二岡もちゃんとわかってくれたし、応援しているって」
「応援? 何を応援するんだ?」
目の前で首を傾げる隼人にイラっとしてあたしはジャンプして隼人の頭を思いっきり殴った。