隼人と朝、一緒に行かなくなって、今日というほど喜んだ日はないと思う。
いつもは寂しく感じていたことも、こうなってしまうとありがたかった。
クラスが違うあたしたちはどちらかから会おうとしない限りは会うこともないし………。
「よっ!」
・・・・・・・・・・・。
あたしは玄関のドアを開けた瞬間にまた閉めた。
なに、今の………。
呆然と考えていると、今度はピンポ~ン♪とインターホンの音が家に鳴り響く。
それは、まるで思わず家のドアを閉めてしまったあたしに『早く出て来い!』と追い討ちをかけているようだった。
「はいは~い! あれ? なんだ、まだいたの? 美優。それなら、美優が出ちゃってよ」
えっ!?
お母さんは、あたしが断る間もなくリビングに入っていっちゃう。
そ、そんな~~~!
出たくないものの、あたしはゆっくりと玄関のドアを開ける。
すると、そこには明らかにわざとらしい笑顔を振りまく隼人が立っていた。
わざとらしい笑顔が余計に怖いんですけど………。
「おはよ、美優」
一緒に行かなくなる前から隼人にこんな風に笑顔で挨拶されることなんて今までなかっただけに、やけに怖い。
「どうして、さっき、ドアを閉めたの?」
ニコニコと笑いながら、ビシッ!と指摘するところは指摘してくる。
そんな隼人にあたしは引きつりながらも「さあ……」と答える。
あたしのこんな見え透いた答え方にも隼人はニコニコとした表情を変えない。
はじめはただ、わざとらしく笑顔を向けているのかと思っていたのだけど、なんだか違うみたい。
何かいいことでもあった………?