「あのさ………。前からずっと思ってたんだけど、ちゃんと着るならはじめから着てたらいいじゃない。そんな途中で毎回毎回」


「美優はわかってないな~。意外ときちっと着るのはしんどいんだよ。窮屈でさ。少しの間でもゆったりとした感じでいたいんだよ」


「じゃあ、別にそんなにきっちり着なくてもいいんじゃない? 別にネクタイとかしてたら、そんなにきちんと着てなくても文句は言われないし。少し着崩すぐらいみんなしてるじゃない」


「みんなと一緒じゃ意味ねえだろ。先生受けはいいほうが得するんだよ。いろいろと」


きちんと着終わった隼人は軽くあたしの頭を小突く。


「隼人ってさ………。どうして、学校じゃそんなに優等生ぶるの? まるで、別人。昔はそんなこと………イヒャ」


しゃべっていたあたしのほっぺをムイ~ンといきなり引っ張る隼人。


「そんなこと別に美優は考えなくていいんだよ。それより、さっさと行くぞ。遅刻なんてしたら、俺の優等生のレッテルに傷がつくからな」


隼人はそう言うと、今まで引っ張っていたあたしの頬から手を離し、代わりにあたしの手を引っ張っていく。




イタイ………。




あたしは引っ張られた頬を擦りながら、隼人を睨む。


なにも、つねることないじゃない。


それに、遅刻するかもしれないのは自分がいつまでも起きてこないのが悪いくせに!


ムカムカしながら、あたしはどすどすと足に力を入れ、怒りながら隼人の隣を歩く。




少しの間歩いていると、急に隼人があたしの手を離す。


これもいつものこと。


目を凝らして少し先を見ると………。