「伊緒、こっち向きなさい。」
涙をこらえる私の耳に、いきなり低い音が入ってくる。
「え…。」
あ、そうだ、今私の横には先生がいるんだった。
どうしよう。
先生驚くよね、寝てると思ったらいきなり泣きそうになってるんだから。
「おい、伊緒?」
「…はい。」
目を先生の方へと向けると、真剣な目で私を見ていた。
何を言われるのだろうか。
怒られる?
それとも、呆れられる?
「……嫌じゃなかったら、おいで?」
そういって先生は私の前に両手を広げる。
予想外の言葉に言葉が出ない。
それ以上に、本当に先生はエスパーなんじゃないかとも思ってしまった。
だって、その格好は私を抱きしめてくれるという事なんでしょう…?