しばらくの間下を向きながら黙っていると、真っ赤な顔をしていた先生がゆっくりと顔を上げた。
上げられた顔には火照りがなく、いつもの先生だった。
「あ、落ち着きました?」
そんな先生を茶化すようにそう聞くと、少しだけ不服そうな顔をした先生が私の顔に視線を向けた。
「…落ち着いた。」
え、それ本当ですか?
かなり同様したような声ですけど。
「伊緒、身体起こせるか?」
「え?はい、大丈夫ですけど…。」
「じゃぁ、抱きしめたいから起こしていいか?」
「――――っっ!!!」
なんですかなんですかなんですか…!!!
仕返しのつもりですか?!
私の顔を真っ赤にさせようという…そんな感じの奴ですか…?
「抱き締めるのに許可とる人なんて普通いないですよ…。」
「あ、やっぱり?…じゃぁ勝手にやるわ。」
グイッ
「え…や、ぅわわっ!!」
精一杯の私の強がりをあっさりと受け止めた先生が、少し強引に私を引き起こし、そして抱き締めた。
これは、今日何回目のハグなんだろう…。
「伊緒。」
「はい?」
私を呼ぶ先生の声が、いつもより少し低い。
これは、間違いなく真剣な時の先生の声だ。
「先生?」