長い間先生の胸の中で泣いていた。
やっと落ち着き呼吸を整えていると、先生が口を開いた。
「なぁ伊緒。俺さ、お前が思ってるほど大人じゃないよ。」
「……そんな事ないです。経験豊富そうだし、コーヒー飲めるし、何より雰囲気が大人ですもん。」
先生は私の発言に驚いた表情を見せてから、少しだけはにかんだ。
「いや、コーヒー関係なくね?伊緒の周りにも飲む奴いるだろ?」
「いますけど、先生の飲み方というか何というか…周りの子とは違うんですよ。」
「へぇ…俺からしたら一緒なんだけどな。」
きっと、皆が先生がコーヒーを飲む姿を見たら惹かれてしまうと思う。
それくらい先生がコーヒーを飲む姿は素敵で、魅力的なのだ。
だから、私の中では結構重要な問題なのである。
「まぁいいけど…あ、でも経験豊富ってのは違うから。」
「え…どうせ高校生の時は女をとっかえひっかえ…。」
「してねーよ!!」
おぉ、ナイスツッコミ…。
「俺、高校生の時は恋愛とか面倒で全くしてないし…。」
「…え、嘘、ですよね?」
そんなに格好いいのに、それを活かさないなんて勿体ない。
とゆうか、先生をほおっておいた周りが何て勿体ない事をしているんだ。
「嘘じゃないよ。まして、こんな夢中になってる恋愛は伊緒が初めてくらいだよ。」
「!!!!!!」
なんで、そんな恥ずかしい、嬉しいことをサラッと言うんですか。
「だからさ、伊緒。」
「はい?」
さっきまでの先生とは違い、とても真剣な顔で私を見つめる。
「そんなに焦って大人にならなくていい。俺は今のお前を好きになったんだから、無理して変わる必要なんてどこにも無いんだよ。」