「…なんですか。」
「いいから。」
「いやです、行きません。」
「そう怒るなよ、悪かったって。ほら、こっちおいで?」
「―――――っっ。」
こんな言葉でドキドキして、許してしまう私はバカなのだろうか…。
しぶしぶと先生の方に近づく。
すると、いきなり先生の腕が伸びてきて力強く抱きしめられた。
うん、抱きしめられるとは思っていたけど、急すぎてビックリした…。
「伊緒、ごめんな。」
「え?」
でもそんな驚きを掻き消すように、先生の言葉が私を更にビックリさせる。
「今まで待たせて…不安にさせて、ほんとごめん。」
…さっきの私の言葉を気にしてくれているの?
「伊緒、あのな…。」
抱きしめていた力を弱め、身体を離して向かい合う。
すると、それはとても近い距離だった。
「先生?」
いつになく真剣な顔が私の顔を熱くさせる。
静まりかえった教官室では、時計の秒針の音ですら鮮明に聞こえる。
先生はゆっくりと私の手を握り、そして小さく息を吸う。
「好きだよ……。」