「先生…私、良い子でも駄目だったよ。」
「……何がだ?」
「さっきね、お母さんと初めて喧嘩して、言い合いになったんだ。それで私、お母さんの仕事に口だしちゃって…。」
「…うん。」
「それ、でね、言われたんだ。あんたみたいな人間は嫌いって…。昔から嫌いだったって…。」
「っっ!!!」
「私、ずっと良い子にしてた。2人が好きで、嫌われたくなくて、少しでもいいから私を見て欲しくて。…でも、結局はその何もかもが無駄で、私はずっと二人に嫌われてた。」
話している途中、何度も頬に涙が伝う。
「先生、何で私は産まれちゃったのかな。誰にも望まれてないのに、何で、何で私はここにいるの…?」
いくら考えても答えなんか出ない。
私がここにいる意味も。
産まれてきた意味さえも…。
きっと、それは先生にも答えられない事。
「伊緒、おいで。」
「せ…んせ……?」
きっと、先生の『おいで』と言う言葉には不思議な力があるんだろうね。
その言葉を聞くだけでドキドキするし、心が暖かくなる。