「片瀬さん?」
進藤先生シャワー浴びたのかな?
髪の毛ベタベタだし、石鹸のいい匂いがする。
「涙目な気がするんだけど、俺の気のせい?…それとも、何かあった?」
いつもは気にならない進藤先生の低い声が、今はやけに耳に響く。
進藤先生って、生徒と二人だけの時には敬語じゃないんだ。
てっきり生徒、先生、関係無しに敬語なのかと思ってたや。
「……おーい、大丈夫か?」
「―――っ!!!!」
やばい、今の『大丈夫か?』って言い方、先生に少し似てた…。
どうしよう、涙が出そうになる…。
「…すいませっっし、失礼しますっ」
涙が零れそうになるのを気づかれたくなくて、勢いよく教官室を飛び出してしまった。
「え、ちょっと、片瀬さん!!」
やめて、進藤先生。
そんなに大きな声で名前を呼ばないで。
先生に聞こえちゃうから。
カシャンッ
教官室を離れる時、何か大きな音がした。
けど、そんな事を気にしてる余裕なんか全然なくて…。
気がつけば、無我夢中になって走っていた。