気持ち良さそうに眠る中でも、時折辛そうな顔をする。
その姿を見る度に風邪の辛さがこちらへと伝わってくる。
そっと、伊緒の髪へと触れる。
動かす度に鼻をかすめるのは、自分の髪と同じ匂い。
何故だかそれだけの事が少しくすぐったく感じる。
そういえば、キスしたのも久しぶりだったな。
何年も前から恋をしていない俺。
当然のようにキスもしてないわけで。
自分ではまだ若いとか思っていたが、行動を振り返ってみると…俺は相当おやじかもしれない。
「……………。」
こんな歳をとって今更思うのもあれだが、恋とかキスって良いもんなんだな。
考える事も増えるが、その考える事でさえ悪くないと思える。
もしかしたら、この気持ちは伊緒に対してだから味わえるものなのか?
そうだとしたら、俺はこいつに救われんだな。
「……無理させてごめん、伊緒。」
眠っている伊緒の布団を直し、もう一度だけ唇に軽くキスをする。
おやすみ、伊緒。
明日起きたらきちんと謝って、それから……お前にお礼言わなきゃな。